2004-05-31

MINCE - Mince is Not complete Emacs

CP/M-80で動作していたEmacsクローンについて、昔書いた記事が出て来たのでとりあえず掲載しておこう。

祝一平氏愛用エディタ

MINCEは祝一平氏の愛用するエディタだった。

1980年代初頭は、やっと16bit機が発表されつつあるという状況で、8bit機が まだまだ現役という頃。私は、X1/X1 TurboというSharpのパソコンを 使っていた。当時、 Sharp系のパソコン・ユーザーの大きな情報源は、日本ソフトバンク(現ソフトバンク) から出版されていた月刊誌「Oh! MZ」という雑誌だった。 その誌上においてX1の解析記事などでテクニカルライターとして読者の圧倒的な支持を受けていたのが、祝一平氏。

祝氏により、「Oh! MZ」誌上でMINCEについて記事が何度か掲載された。
他のエディタや当時のワープロと比較し、MINCEの動作やインターフェイスが如 何にに優れ知的なものかを讃えた記事であった。 当時、OSに添付のエディタはラインエディタが当たり前の時代で、Sharp系の CP/Mに標準で添付されていたフルスクリーンエディタであるWordMaster に喜んでいた私にとって、氏の記事は非常に衝撃的で感銘を受けたのを覚えている。是非、MINCEを使ってみたいモノだ」と当時恋いこがれた。

祝一平(本名:三上之彦)氏は、その後ディスクマガジンの編集長や、 満開製作所の代表取締役社長などと勤められておりましたが、 1999年4月2日に逝去されました。 氏の活動が当時のSharpユーザーに及ぼした影響ははかりしれません。 心よりご冥福をお祈りいたします。

MINCEの入手

MINCEにあこがれたものの、1985年ころはソフトウェア市場も一部のニッチな ユーザーのものであった。 従って、海外のソフトについての情報もなく、こんな米国産のソフトをどこでも 流通しているわけもなくさっぱり手がかりのない状況だった。

1988年頃モデムで通信を始めた頃で、主にCP/Mで稼動する海外の フリーソフトを日本に紹介していたユーザーグループのパソコン通信に繋いで ソフトウェアを漁っていた。 偶然にMINCEのことを思いだし、掲示板に「MINCEってエディタ、誰か知ってる?」 みたいな書き込みをした。すると、そこの会長様がご所有でなんと「譲っ てもよいよ」と一言。早速、ユーザーのオフ会におじゃましてMINCEのディスケッ ト頂くことができた。謝謝。

MINCEの概要

エディタとしては、名前からもわかるように Emacsのクローンである。
ただし、 8bit機のOS CP/Mで稼動する・・つまり64KBの制約の上で稼動するため当然Emacs のサブセットの機能となっている。祝氏の絶賛してた部分もいわゆるEmacsな 部分だ。

特にEmacsで実現していたリージョンやYanking、 インクリメンタルサーチ、操作系など当時はとてもすばらしく見えた。 当時、ジャストシステムの一太郎に代用される日本産のワープロ、エディタは、 「操作(たとえばコピーなど)」のメニューを選んで、その後対象範囲を選択す るという操作体系がほとんど。 これに対し、MINCEではEmacs同様リージョン(範囲)を指定してから、 「操作」を選ぶという方式で、今から考えればその後GUIで標準として採用され た操作体系だ。 何しろ、MS-DOSですらUnixをお手本にシェルを拡張していた時代。こんなことでも、Unixっぽいって雰囲気と相まって、とてもスマートに見えたものだった。

操作系は標準的なEmacsだが、lispによるマクロなどの機能ない。 キーのリバインドや画面、文字の色などのカスタマイズはできた。カスタマイズ プログラムにより本体へのパッチという形で実現していたと思う。

英語圏のソフトのため8ビット目を無視しているようで、日本語の入力・表示 はできなかった。

調べたところ、製品には実際に稼動する製品と、一部ソースで完全にビルド できるライブラリ付きというものもあったようだ(標準で添付されていたのか、 別製品だったかは不明)。MINCE自体はC言語で記述されていたらしい。 ユーザーのプログラムを直接変更して機能拡張したい という要求を無視できなかったようで、いかにニッチな市場であったかがわかる。

Unicornという会社について

Mark of Unicornという会社が、このMINCEというアプリケーショ ンを開発し販売した会社。1980年代の前半に学生により設立された会社のようだ。製品としては当初、8bitのCP/M向けにこのMINCEとScribbleというテキ ストフォーマッタを開発・販売していた。 これら製品はDOSへも展開したり、MINCEもPerfectWordという後継製品もでたらしい。

その後、ワープロ関連ソフトの競争激化に伴い 1984年から賢明にも音楽ソフトの分野へ方向転換した模様。 幸いにして、会社は存続しており日本法人 もある。 もっとも、今ではその製品ラインナップの中にはこの懐かしいエディタの名前を見つけ ることはできないが。

参考)

MOTU Japan
MOTUの日本法人
The Craft of Text Editing
グレイグAフィンゼス著の「The Craft of Text Editing-手作りのテキス トエディタ」の全文が掲載されている。日本では岩谷宏氏がビレッジセ ンターより1994年に訳を出版しているようだ。中にMINCEについての記述が出てくる。
Geek-Girlの Emacs Reference materials
Unix Programerである Jennifer Myersにより保守されているUnix関連の文 書群の一つ。EmacsのImplementaionについてのプロファイルを整理してあ り、MINCEについても簡単に掲載されている。

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