『裸者と裸者』(上・下)』

昨年10月に作者の打海文三さんが亡くなった記事を目にしてから、ずっと読みたいと思っていた作品。

裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争
打海 文三
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裸者と裸者〈下〉邪悪な許しがたい異端の
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近未来、アジアの経済崩壊、大陸からの難民により無政府状態になった日本での孤児たちの生き様を描いた作品。

戦争状態なので、戦闘、戦況の描写が多い。無政府状態の日本というとかなり突飛な設定のように思えるが、アフリカやアジアの状況を見ていると起ることが起れば結構ありえる設定だと思える。戦況の推移は都合がよすぎる面もあるが、作者の並々ならぬ筆力で淡々と語られるそれはリアリティのある世界を作りだしている。

上巻は軍隊の中で成長している孤児・佐々木海人の視線で、下巻は女マフィアを形成していく双子の月田姉妹の視線で語られていく。タイトルの「裸者」とは持たざる者・孤児としての両者を指しているとも取れる。

混沌の中で強くなっていく少年・少女の成長物語とも読めるし、否応な戦闘に巻きこめれていく子供や性的マイノリティら弱者の姿を通して戦争の無惨さをテーマとしているという読み方もあるだろう。

個人的には、この小説は「ガンダム」だ。
就職期には「新人類(ニュータイプ)」と呼ばれた僕等の世代で最初のガンダムがウケたのは、僕等は戦争を知らずガンダムでは子供が戦争の中に居て戦争をしているからだ。僕等の世代は勿論戦後だし60年代の安保闘争に終っていたし、ティーンになった頃にはノンセクトの学生運動はあったけど学園紛争自体は下火だった。かと言って80年代の学校が荒れた頃にはもう大学生だった。本当に紛争とか戦いを知らない世代なのだ。だから、きっと戦争ごっかが好きなんだと思う。「一個小隊を本部の防衛にあてる。おまえは七個小隊を連れて敵司令部を攻撃しろ。すばやく、徹底的に叩け!」とか言ってみるのが好きなのだ。

この小説はそんな雰囲気と科白に溢れている。

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