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言葉使い師

久しぶりに神林長平。
オフィスの近くの書店で神林長平フェアをやっていたのでの購入。1981-83年に『SFマガジン』に発表された短篇6作をまとめたもので、非常に初期の作品。

言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173) 言葉使い師 (ハヤカワ文庫 JA 173)

早川書房 1983-01
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個人的には他人への愛がどこまで物事を超越するかを描いた「甘やかな月の錆」が一番印象深い。前半の小学生としての自我を描く部分の「甘く幸せな日々」と、徐々にそこから去らねばならないヒトが描かれている。自身の幼少期のダブって、楽園を追放されるのにその罪を自覚できないようなもどかしさを思い出した。

表題の<言葉>が持つ力をSF的視点での解析を試みた「言葉使い師」の中で、芸術とは脳の中身を自分で実際に確かめる行為だと語られるが、神林のやっていることはまさにこれ。この短編に限らず、普遍のテーマをもっていてそれをいろんなアプローチで作品としていると感じられる。その普遍のテーマは、言葉にできないがあえて言えば「ヒトの認知」とか「理解できないもの」を言葉にすること。それを、作品ごとに独自のフォーマットを生み出して作品にしている。これが神林の作品を圧倒的なオリジナリティのある作品としている所以か。

作品によっては失敗しているものもあるが、そういったアプローチで何かを表現しようチャレンジとした痕跡は必ず感じられる。だから、別の作品も読んでみようと思える貴重な作家。

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