春を嫌いになった理由

誉田 哲也の新しい文庫『春を嫌いになった理由』。
この作家は警察小説というイメージが強いが、『武士道シックスティーン』を見てもわかるようにそのジャンルは広い。今回は珍しいホラーサスペンスだが、彼のデビュー作がホラーだったことを考えるとこういったジャンルは実は好きなのだろう。

物語は主人公の瑞希と中国からの密入国者、さらにもう1人主人公の関わってるテレビ番組を茶の間で見てるらしき視聴者の男性、一見無関係な3つのストーリーがカットバックしながら進んでいく。ギャグ交じりの主人公側のノリと、かなりシリアスな密入国者の展開、時折出てくる視聴者の妻とのやり取り、これらが一体どこで関わっていくのか謎が最後まで読者を引き込んでいく。
この謎解きのほうは途中からなんとなく予想がつくのだが、主人公のトラウマに関する謎解きが「そうくるか!」ってちょっと反則っぽい展開…… まぁ、だからホラーなのだが。

超能力者により事件を解決するという主人公の叔母がプロデューサーをつとめる架空の番組が舞台となっているが、下敷きにされているのは実在の『テレビのちから』という番組。国外活動を禁止されているはずのFBIで捜査官をやってるとかいう超能力者とかで出てきて、怪しさ満載で批判も多い番組だった。そんな番組をモチーフに当時即座取り込んで作品を書き上げていたとは、やはりこの作者ただ者ではない。

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