Fruitless Fall

日本語タイトルは『ハチはなぜ大量死したのか』。原題の『実りなき秋』のほうが絶対によいと思うのだが。1962年に出版された鳥たちが鳴かなくなる春が来るという農薬の危険を訴えたレイチェル・カーソンの著書『沈黙の春 Slient Spring』を意識してると思われるので残念。

ある日突然、ミツバチが巣箱から消えてしまうという蜂群崩壊症候群(CCD)が2006年前後から世界中で起きている。北半球の3分の2のミツバチが消えたとも言われているが、本書はその原因を一つ一つ検証している。

植物の進化とミツバチの生態、養蜂の歴史、今のアメリカの農業の実態、養蜂の現代の実態を描いているが、内容も興味深く、科学ノンフィクションにもかかわらず美しい比喩と推理小説のような展開で読ませる文章を素晴らしい。翻訳のレベルも高い。

読み進めていくと、工業化した農業に頼っている実態、ここでも依存している品質の無視の汚染された中国の蜂蜜の流通、自然界のバランスの崩壊など背筋が寒くなる。結局CCDの原因は明らかにならないが、上記のような過剰なまでの工業化が自然界では動的平衡を決定的に崩壊させているのではというメッセージには素直に納得できる。

科学ノンフィクションとしては出色で、現代のシステムを考えさせられる良書。

ハチはなぜ大量死したのか (文春文庫)
ローワン ジェイコブセン 福岡 伸一
文藝春秋 (2011-07-08)
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