Rain(Beatles Cover)

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はじめに

Universal Audioのセールで10本ほどプラグインを買ったので、せっかくだから 60年代の曲をやってみようと思い立ちました。 どうせならADT(Automatic Double Tracking)が使われている曲がいいなと思い、 「Rain」を選びました。

The Beatlesの「Rain」は、1966年にシングル「Paperback Writer」のB面として発表された楽曲で、ADTやテープの逆回転、 Varispeedなどの実験的な録音技術が使われています。 ADTが使われているなら、この機会にREEL ADTプラグインも買ってみようと なり、結局プラグインをさらに追加購入することになりました。

ギターはEpiphone CasinoとYAMAHA Revstarを使ってレコーディングし、 Logic Proでミックスしています。

Yostos · Rain(Beatles Cover)

REEL ADT:60年代の革新技術を再現

この曲のために追加購入したREEL ADTプラグイン(UADではなく、別のメーカーのもの)が、 ミックスで活躍しています。 ADT(Automatic Double Tracking)は、1966年にAbbey RoadスタジオのエンジニアKen Townsendが開発した技術で、 ボーカルやギターに自然な厚みと揺らぎを加えることができます。

Beatlesがその筋の人たちにデビュー当初から注目されたは、ダブルトラックという ボーカルを二度録りして音を厚くしヌケをよくするレコーディング技術でした。 しかし、ダブルトラッキングは同じパートを2回演奏して重ねる必要があり、 John Lennonあたりが面倒くさがってADTが開発されたと言われています。

ADTは2台のテープマシンを使い、わずかに遅延とピッチ変化を加えることで、 1テイクから疑似的にダブルトラックの効果を狙ったものです。 その結果、豊かなサウンドを作り出すことができ、 John Lennonは特に気に入り多くの楽曲で使用されています。

REEL ADTプラグインは、このビンテージ機材の挙動を忠実に再現しており、 単なるディレイやコーラスとは異なる、有機的で温かみのある音像を作り出します。

Capitol Chambers:本物のAbbey Roadリバーブ

リバーブには、UADのCapitol Chambersプラグインを使用しました。 これは、Abbey Roadスタジオにある実際のエコーチャンバー(残響室) をサンプリングしたもので、人工的なデジタルリバーブとは一線を画す、 自然で温かみのある空間を作り出します。

エコーチャンバーとは、スピーカーとマイクを設置した専用の部屋で、 物理的な空間の残響を録音に加える仕組みです。 Abbey Roadのチャンバーは、数多くの名盤で使われてきた伝説的な空間です。

今回は「Chamber 4 Vocal」プリセットをベースに、センド量を調整しています。 ボーカルとコーラスには多めのリバーブを送り、 ギターには控えめ(10〜15%)、ドラムはほぼドライにしました。 この配分により、楽器ごとに異なる奥行き感を演出し、 立体的なサウンドステージを構築しています。

Varispeed:テープ操作

Logic ProのVarispeed機能を使って、テープマシンの再生速度を変える テクニックを再現しました。

当時Beatlesはテープ操作の実験に夢中だったそうです。

最近は未公開だったTakeも公開されるようになり、当時の操作がだんだん判明しています。 おそらく次のような操作が行われています。

  1. バックトラックを速い速度でキーをAかBbで演奏する
  2. テープ速度を落としてキーFかF#あたりにして、ボーカルを録る
  3. テープ速度を少し速めて、キーGより少し上に聞こえる程度の速さにしてマスタリングする

この方法で、ギターやベースは気怠い感じなのに、ボーカルだけ明るく高音が強調された音になっています。

また、間奏部分では逆回転のドラムやシンバルが使われており、 こうした実験的なテープ操作が「Rain」のサイケデリックな雰囲気を 作り出しています。

その他のUniversal Audioプラグイン

REEL ADTとCapitol Chambers以外にも、以下のUADプラグインを使用しています。

Helios Type 69
60年代のコンソールEQで、ボーカル、ギター、ベースに温かみのあるトーンを付加。
1176 Rev A
クラシックなFETコンプレッサーで、ボーカルとギターに攻撃的なキャラクターを追加。
LA-2A
チューブコンプレッサーで、コーラスに滑らかな圧縮をかける。
Pultec EQP-1A
ビンテージパッシブEQで、低域と高域の美しい倍音を強調。
SSL G Bus Compressor
ミックスバスで全体をまとめ上げる。
Ampex ATR-102
マスタートラックでテープサチュレーションを加え、アナログ感を演出。

これらのプラグインは、単に音を処理するだけではありません。 それぞれが持つ独特の倍音やサチュレーション、 ノンリニアな挙動によって、デジタルでは得られない温かみと 音楽的なキャラクターを付加しています。

まとめ

せっかく買ったUniversal Audioのプラグインと、追加購入したREEL ADTを使って「Rain」をカバーしてみました。

ADTやCapitol Chambers、Varispeedといった60年代の技術を プラグインで手軽に試せるのは便利ですね。 特にREEL ADTは、単なるディレイやコーラスとは違う独特の揺らぎがあって、 使っていて楽しいプラグインでした。

プラグインを買うと使いたくなるという、よくあるパターンですが、 おかげで久しぶりにBeatlesのカバーを楽しめました。

参考リンク