MulmoCast: AIと人間が協働する次世代プレゼンテーション・プラットフォームを試してみた
AIネイティブなプレゼンテーション・プラットフォーム「MulmoCast」を実際に検証してみました。 一つのスクリプトから動画、ポッドキャスト、PDFなど複数フォーマットに自動変換できる 革新的なツールの使い方と実用性について詳しく解説します。
By Toshiyuki Yoshida
あの中島聡氏が開発している mulmocast の検証しました。 ガイドにしたがって、ビジネスプレゼンテーションと子供用の絵本的な動画を作って みました。生成 AI のモデルは Claude や Gemini も選択できるようですが、今回は デフォルトのまま OpenAI を使いました。
MulmoCastとは何か?その意義は?
MulmoCast は、AI 時代に特化して設計された次世代のプレゼンテーション・プラッ トフォームです。従来の PowerPoint や Keynote が AI 以前の時代に人間のクリエ イター向けに設計されたのに対し、MulmoCast は最初から AI ネイティブなツールと して開発されています。
最大の特徴は、 1 つのスクリプトから動画、ポッドキャスト、スライドショー など、複数のフォーマットに自動変換できることです。 現代では情報消費のチャネルが多様化しており、Zoom でのプレゼンテーション、Slack での共有、移動中の動画視聴、通勤時のポッドキャスト聴取など、様々な場面に対応する必要があります。MulmoCast はこの課題を解決します。
核となるのは「MulmoScript」という JSON/YAML 形式の中間言語です。これは映画の脚本や Web マークアップのような役割を果たし、ChatGPT や Claude などの大規模言語モデルが理解・生成できる形式になっています。AI がストーリー構造からビジュアルまでをすべて定義し、人間はクリエイティブループの中で方向性を決めるという協働モデルを実現しています。
インストール方法(Mac)
MulmoCast のインストールは比較的簡単です。Node.js と ffmpeg が必要になります。
まず、NPM を使って MulmoCast をグローバルインストールします。
npm install -g mulmocast
次に、動画生成に必要な ffmpeg をインストールします。Mac の場合は Homebrew を使用します。
brew install ffmpeg
最後に、プロジェクトディレクトリに.env
ファイルを作成し、必要な API キーを設定します。
OPENAI_API_KEY=your_openai_api_key
DEFAULT_OPENAI_IMAGE_MODEL=gpt-image-1
GOOGLE_PROJECT_ID=your_google_project_id
NIJIVOICE_API_KEY=your_nijivoice_api_key
BROWSERLESS_API_TOKEN=your_browserless_api_token
OpenAI API キーは必須ですが、他の API キーは使用する機能に応じて設定してください。
基本的な使い方
MulmoCast の基本的な使い方は 2 ステップです。
ステップ1:スクリプト生成
まず、AI との対話でストーリースクリプトを作成します。
mulmo tool scripting -i -t business -o ./ -s story
このコマンドの説明は次の通りです。
-i
: インタラクティブモード-t business
: ビジネステンプレートを使用-o ./
: 出力ディレクトリ-s story
: ファイル名のプレフィックス
実行すると、AI との対話が始まります。コンテンツの内容、ターゲット層、長さなどについて質問され、それに応えることで MulmoScript 形式の JSON ファイル(例:story-1746600802426.json
)が生成されます。
ステップ2:動画生成
生成されたスクリプトから動画を作成します。
mulmo movie story-1746600802426.json
このコマンド 1 つで、音声合成、画像生成、動画編集までが自動実行され、最終的に MP4 ファイルが出力されます。
利用可能なテンプレート
用途に応じて以下のテンプレートも選択できます。なんとなくどんなものが出来るか 想像できますね。
- akira_comic
- business
- children_book
- coding
- comic_strips,
- drslump_comic
- ghibli_comic
- ghibli_image_only
- ghibli_shorts,
- ghost_comic
- onepiece_comic
- podcast_standard
- portrait_movie,
- realistic_movie
- sensei_and_taro
- shorts
- text_and_image,
- text_only
- trailer
検証結果
今回、ビジネスプレゼンテーションと子供用絵本の 2 つのパターンで検証しました。 生成 AI モデルは Claude や Gemini も選択可能ですが、今回はデフォルトの OpenAI を 使用しました。
mulmo tool scripting -i -t business -o ./ -s story
で Agent と会話してストーリーを練って、mulmo movie story-xxxxxxxxxxxxx.json
で動画を生成します。
ちょっとした会話でそれらしいプレゼンテーション動画が出来ます。以下がその動画 です。
実際に使ってみた感想として、簡単な会話だけでそれらしいプレゼンテーション動画 が生成できることに驚きました。内容の深みという点では限界がありますが、1st Call の資料としては十分に実用的なレベルに達していると感じました。
特に印象的だったのは、一度スクリプトを作成すれば、そこから動画、ポッドキャス ト、PDF など複数フォーマットに展開できる点です。コンテンツの再利用性が高く、 効率的な情報発信が可能になります。
まとめ
MulmoCast は、AI 時代のコンテンツ作成における新しい可能性を示すツールです。従 来のプレゼンテーション作成が「人間がすべてを制作する」モデルだったのに対し、 「AI と人間が協働して作成する」という新しいパラダイムを提示しています。
現時点では完全に実用レベルに達しているとは言えませんが、プロトタイプや初期段 階の資料作成には十分活用できると感じました。 特に、アイデアの可視化や概念の説明では、従来よりもはるかにコンテンツ作成を効率化できます。
今後、AI の精度向上とともに MulmoCast のようなツールがより洗練されれば、コンテ ンツ作成の方法が根本的に変わる可能性があります。単一のスクリプトから多様なメ ディアフォーマットに展開できる仕組みは、情報発信の効率化に大きく貢献するでし ょう。
興味のある方は、ぜひ一度試してみることをお勧めします。AI 協働時代のコンテンツ作成を体験できる貴重なツールです。