生成AIでメール管理 - Claude Desktop x FastmailMCP連携
Claude Desktopの最新機能であるMCP(Model Context Protocol)を使って、プライバシー重視のメールサービス「Fastmail」とClaude Desktopを連携させ、AIアシスタントにメール管理を手伝ってもらう方法をご紹介します。
By Toshiyuki Yoshida

はじめに - 生成AIがメールを扱う時代
メールの確認、返信、整理...日々の業務で避けて通れないメール管理。この作業を生成 AI に任せられたらどうでしょうか? MCP を使って生成 AI とメールサービスを連携できれば、実は比較的簡単に実現できます。
「最近の重要なメールを要約して」「特定の人からのメールを検索して」といった指示を出すだけで、AI がメールボックスを確認し、必要な情報を提示してくれる。そんな未来がもう実現可能なのです。
MCPとは何か - Claude Desktopの拡張機能
MCP(Model Context Protocol)は、Claude Desktop に外部ツールとの連携機能を追加するプロトコルです。これにより、Claude は単なるチャットボットから、実際にツールを操作できる AI アシスタントへと進化します。
今回使用するfastmail-mcp-serverは、Alex Diaz de Cerio 氏が開発したオープンソースの MCP サーバーです。このサーバーは、Fastmail の JMAP API(JSON Meta Application Protocol)を介してメールサービスと通信し、Claude がメールの読み取り、送信、検索、整理などを行えるようにします。TypeScript で実装されており、12 以上のツールを提供する包括的なメール管理ソリューションです。
Fastmail MCPサーバーのセットアップ
セットアップは思ったより簡単でした。以下の手順で進めます。
前提条件
- Node.js 18 以上
- Fastmail アカウント(API アクセスが可能なプラン)
- Claude Desktop
1. MCPサーバーのインストール
npm install -g @alexdiazdecerio/fastmail-mcp-server
2. FastmailでAPIトークンを取得
- Fastmailにログイン
- Settings → Privacy & Security → Integrations → API tokens
- 新しいトークンを作成(Mail、Submission 権限を付与)
3. Claude Desktopの設定
~/Library/Application Support/Claude/claude_desktop_config.json
を編集します。
{
"mcpServers": {
"fastmail": {
"command": "fastmail-mcp",
"env": {
"FASTMAIL_EMAIL": "あなたのメール@fastmail.com",
"FASTMAIL_API_TOKEN": "取得したAPIトークン"
}
}
}
}
Claude Desktop を再起動すれば準備完了です。
実際の使用感と活用シーン
設定が完了したら、早速使ってみましょう。Claude Desktop に依頼するだけで、様々なメール操作が可能になります。
「最近のメールの一覧を見せて。ただし広告メールは除外して。」と入力するだけで、Claude が最新のメールリストを表示してくれます。 メール種別、件名、送信者、日時が整理された形で提示されて表示されます。 「メール種別」は Claude がメールを見てカテゴライズしてくれている項目なので、従来のメールクライアントでは不可能な項目です。
注意点は、メールを表示しただけでは既読にならないという仕様です。 これはプライバシーとセキュリティを考慮した設計で、意図しない既読マークを防いでいます。 既読にしたい場合は、「このメールを既読にして」と明示的に指示する必要があります。
メールの送信も同様にシンプルです。「田中さんに以下の内容でメールを送って。 件名はプロジェクトの進捗報告、本文にお疲れ様です。今週の進捗を報告します...」といった指示で、メールの作成から送信まで一気に実行してくれます。
ただし、現時点では一部制限もあります。添付ファイルの送信、HTML メールの作成(プレーンテキストのみ対応)、送信済みメールの自動保存、カレンダー連携などは対応していません。
generate_email_analytics の機能を呼び出せば、どのようなメールがどのような分布 で来ているかを分析してくれます。
遭遇した課題と対処法
最大の課題は、送信したメールが送信済みフォルダに保存されないことでした。調査の結果、これはJMAP仕様(RFC 8621)の設計によるものだとわかりました。
JMAP では送信(EmailSubmission)とメールボックスへの保存が意図的に別操作として設計されており、送信成功時に自動的に送信済みフォルダに保存するにはonSuccessUpdateEmail
パラメータの実装が必要です。しかし、現在の fastmail-mcp-server ではこのパラメータがまだサポートされていません。
作者の方にGitHubリポジトリで issue を作成し機能追加をリクエストしています。 暫定対応としては BCC に自分のアドレスを追加をすればよいと思います。
この問題は多くの JMAP 実装で共通の課題となっており、コミュニティでの議論が活発に行われています。
今後の可能性とまとめ
Claude Desktop と Fastmail の連携により、メール管理の新しい可能性が広がりました。自然言語でメールを操作できることで、以下のような未来が期待できます。
- より高度な自動化: 条件分岐を含む複雑なメール処理
- 他のツールとの連携: カレンダー、タスク管理との統合
- AI による返信提案: 文脈を理解した返信文の自動生成
- メールの自動分類: AI による重要度判定とフォルダ振り分け
現時点では送信済みメールの保存など、いくつかの制限がありますが、fastmail-mcp-server は活発に開発が続けられており、MCP エコシステム全体も急速に発展しています。オープンソースコミュニティの力で、これらの課題も近い将来解決されることでしょう。
生成 AI にメール管理を任せる第一歩として、ぜひ Fastmail MCP サーバーを試してみてください。日々のルーティンワークから解放され、より創造的な業務に集中できる時間が生まれるはずです。
参考リンク
- fastmail-mcp-server (GitHub) - 本記事で使用した MCP サーバー
- Fastmail - プライバシー重視のメールサービス
- Fastmail API Documentation - JMAP API の詳細
- JMAP Specification (RFC 8621) - JMAP プロトコル仕様
- Model Context Protocol - MCP の公式情報