今週の気になった記事や出来事は次の3つです。

  • 閉店予定のイトーヨーカドー津田沼店を見て感じたGMSの終焉
  • NVIDIA株急落
  • 米不足についての調査と考察

閉店予定のイトーヨーカドー津田沼店を見て感じたGMSの終焉

今週は閉店予定の津田沼のイトーヨーカドーを見てきました

感じたのはかつて「そこに行けば何でもある」とういGMSという形態の終焉です。モノが あれば売れる時代が終わり、欲しいモノしか買わない消費者に対してGMSは「なんでもあ るが、欲しいモノはない」場所になってしまいました。

今回津田沼店だけでなく全国で33店舗閉店を行い構造改革に取り組んでいるイトーヨー カドーですが、方針として「衣料品の縮小と食への注力」「首都圏店舗への絞り込み」 がポイントのようです。衣料品は祖業であるだけに既に方針が揺れておりアダストリア との協業で新ブランドを立ち上げるなど既に方針がブレています。「首都圏店舗への絞 り込み」は大型SCとの競合をさけたのでしょうが、そこには安さに特化してすさまじい 成長を見せているオーケーやロピア、GMSを目指さず食品+生活必需品の品揃えで勝負し てきたライフやベルクなどがせめぎあっており道ではありません。

津田沼店を見ると老人が多い中セルフレジしかない、ざっと商品を見ても陳列が悪く商 品を捜しにくいなど、消費者目線では色々問題がありそうです。更に縮小していくので はないかと思います。

NVIDIA株急落

先週10月くらいまでは上昇相場を期待できるのでは と述べたばかりですが、9月 3日に9.5%の下落で米国過去最大の2,790億ドル減という記録まで作ってしまいました。 同社の業績がアナリストの予想を上回ったものの投資家の期待に届かなかったことが契 機で下落を始めましたが、下落したことで更にAI投資への不安が形となって現れたよ うです。

一方で不安要素は、3点です。

まず、特定企業4社に売上が依存している点です。この4社はMicrosoft、Meta、Amazon、 Googleと見られています。つまりAIを牽引する4社です。従って、同社がAIブームに依存 し過ぎている点は確かで、Amazonが自社AIチップTriniumを進めているようにGoogle、 Metaも自社AIチップに舵を切っています。従って、同社のGPUの需要は時限的で数年後に はこの分野でのシェアを下げていくことは確かです。

2点目は反トラスト法違反の可能性です。Bloombergの記事 によると司法省は取引先企業に文章提出令状を提出し本格的な調査を始めたようです。 実際GPU品薄の状況でサーバーとの抱き合わせ販売をしているとの話もあります。状況に より政府による介入もあり得るので、こちらの方が心配ですね。

3点目はAI製品の熟成です。AIは大量データから機械学習モデルを構築する「学習プロセ ス」と既にあるモデルを用いて新しいデータに対する予測や分類を行う「推論プロセ ス」に大きく大別できます。ゲームのグラフィック計算に用いられていたGPUは高い並行 処理能力や高速で大量メモリアクセスなどが「学習プロセス」の処理に向いており NVIDIAのGPUが用いられてきました。AI製品が熟成するにつれ「推論プロセス」の比重が 大きくなってきますが、高い計算能力や並列処理能力よりは、単一タスクのレイテン シーのほうが重視される傾向となりNVIDIAが得意とするGPUとは特性が異なります。

こうしたことから、長期的には「学習プロセス」ではメインプレイヤーであり続けると 思いますが、AI全体で見るとNVIDIAの存在感は相対的に薄れていくでしょう。AI市場自 体の拡大もあるのでまだ成長はあると思いますが、現状の評価が過剰であることは間違 いありません。ただ、直近は現行のGPUは順調に売り上げており次世代のBlackwellとい うGPUも控えており、個人的にはまだ勢いが衰えたとは言えずそこまで悲観的には考えて いないです。

米不足についての考察

昨今「米不足」と騒がれスーパーに行ってもお米が売り切れになっており買うことが出来ない状況もしばしば見受けられます。米の価格の上昇も地域によっては見受けられるようです。

米不足の原因について「インバウンドの増加」との報道もありますが、とてもインバウ ンド増加が米不足の原因とは思えません。農林水産省の「米をめぐる参考資料」を見る限り米の需要 は減り続けています。日本政府観光局の「訪日外来客統計」を見ると、イン バウンドは昨年に比べると7月で230万人→330万人と増えてはいますが、冷静に考えてみ ましょう。月約100万人の訪日者が1年を通して増加し、これらの訪日者が平均2週間滞在 し3食とも米を食べたとします。1食当たり150gだとすると、インバウンドによる米消費 の増加は75,600tで昨年の主食用収穫量6,610,000tの内1.14%に過ぎません。3食とも米と いうのは珍しく滞在期間ももう少し短いでしょうから、現実には1.0%以下でしょう。と ても全体に影響する増加とは思えません。

「酷暑での不作」とも言われています。最近は「政府統計の総合窓口 e-Statで統計情報を確認できるので、確認してみましょ う。農林水産省の 作況調査 から確認することができます。このデータで確認する昨年の10a当たり収穫の作況指 数は101です。平年並で特に不作という訳ではありません。

この統計を見ていて気付くのは、作付面積が2022年から2023年にかけて1,355,000ha → 1,344,000haと10万haも減り、収穫量も10万トン近く減っています。このインパクトはイ ンバウンドが月当たり130万人増えたと同等のインパクトです。念のため統計で最も古い 2004年と比較すると、作付面積で1,344,000ha減、収穫量は1,565,000トン減で月当たり 2,000万人のインバウンド増加のインパクトです。

結局、根本的には減反政策により米の生産量自体が落ちていることが問題で、ちょっと した受給のバランスで価格高騰したり品不足になったりという状況なのでしょう。安倍 内閣の時に減反をやめた認識していましたが、目標値設定がなくなっただけ減反に伴う 補助金は出続けており事実上継続されています。そもそも需給がバランスしておらず、 農林水産省の「米の消費および生産の近年の動向について」 という資料を見ると、2023年の需要量が691万トンに対して主食向け収穫量が661万トン です。そう、ベースとして米の収穫量が足りていないのです。

結局米価格を高止まりさせて、農家が減反して水田を売却したお金が預金されるという JA農協にとっては蜜の味の状況なのでしょう。バカな話です。今年の収穫が始まり、米 不足が解消されると言いますが、データだけ見るとちょっと信じがたいです。