日本政府が無能露呈、「米増産」への転換
日本政府が米増産への政策転換を表明しましたが、昨年3月の農林水産省のデータから米の供給不足は明らかでした。なぜ政府の対応が1年も遅れたのか、減反政策の問題点と併せて検証します。
By Toshiyuki Yoshida
2025 年 8 月 5 日、石破総理は第3回米の安定供給等実現関係閣僚会議を開催し、ついに米の生産量不足を認め、増産への政策転換を表明しました。
会議で石破総理は、価格高騰の要因として以下の点を認めました。
「米の需要量を見通すに当たっては、足下の家計の動向などに立ち返った把握ができていなかったことやインバウンド観光客の影響の観点がなかったこと」
「こうした点が不十分であるにもかかわらず、生産量が足りていると判断をしていたこと」
「現時点では、生産量に不足があったことを真摯に受け止め、今後の需給ひっ迫に柔軟かつ総合的に対応できるよう、今後の政策の方向性を次のように明確にいたします。1つ目に、増産に舵(かじ)を切ること」
なぜ今になって? 遅すぎる対応ではないでしょうか。
過去の記事を確認すると、昨年9月に既にベースとして米の収穫量が足りていないのです。
と書いています。
農林水産省が公表している資料を丹念に読めば、
昨年の段階で誰でも米の供給が足りないことは明白でした。
一体、何をやっていたんでしょう?
以下がその抜粋です。
結局、根本的には減反政策により米の生産量自体が落ちていることが問題で、ちょっとした需給のバランスで価格高騰したり品不足になったりという状況なのでしょう。安倍内閣の時に減反をやめたと認識していましたが、目標値設定がなくなっただけで減反に伴う補助金は出続けており事実上継続されています。そもそも需給がバランスしておらず、農林水産省の「 米の消費および生産の近年の動向について」という資料を見ると、2023 年の需要量が 691 万トンに対して主食向け収穫量が 661 万トンです。そう、ベースとして米の収穫量が足りていないのです。
つまり 2023 年の段階で需要に対して供給が 30 万トン不足していたのです。 これは 550 万人分の年間消費量に相当し、福岡県全人口分の米が足りていなかったと 言うことです。これで、これまで政府が説明してきた「生産量は足りている、流通の 問題」と信じていたとすれば、よほどおめでたい頭脳の持ち主です。
改めて思うのは、次の 2 点です。
- 利権なのか、思想なのか、理由はわかりませんが、こんなことすら読み取れなかった このような明白な問題を見過ごしていた無能な政治家が政策決定に関わっていました。
- 農林水産省も同様に問題把握が不十分でした。この資料、統計はたくさ ん掲載されていますが「で、必要なアクションは何?」という提言は何 1 つありませ ん。行政文書の典型的な問題と言えるでしょう。
この問題の根本解決には、政策決定プロセスの抜本的改革が不可欠です。
データが示す明確な問題を 1 年も放置した責任を明確にし、なんらかの責任を取らせ農業政策を利権構造から切り離す必要があります。 農業従事者、消費者、そして国民全体がこの問題に関心を持ち、政策の透明性を求め続けることが重要でしょう。
真の食料安全保障とは何か、改めて問い直すべき時です。 でないと一揆を起こってもおかしくありませんね。